コストとリスクを最適化!最小検出サイズから考えるカメラ選定方法とは

画像検査のコストダウン

カメラの選定はプロジェクトの成功に大きく影響します。
画像・AI検査を導入検討中の皆さんはこんな悩みがありませんか?

「少しでもコストを抑えたい…」
「選定中のカメラ仕様は問題ないのか?」
「導入は難しそうだし、リスクを抑えたい…」

ここでお伝えするのは、カメラから始めるコストの最適化方法です。
ターゲットとする欠陥の最小検出サイズからカメラを選定する方法を理解し、最適なコスト・仕様で装置を導入しましょう

結論:最小欠陥が2画素×2画素以上で映る条件が必要

結論から書きます。

画像側の条件として、検出できる欠陥の最小サイズは2画素×2画素分〜と考えましょう。
検出したい最小欠陥がφ0.1mmだとすると、画像上における1画素が0.05mmであれば、2画素×2画素の条件を満たせることになります。
この考え方をベースに、検査対象の大きさと必要な画素数からカメラを選定します。

カメラの選定方法。最小欠陥の撮像条件。

検討手順を解説

全体の流れは以下の通りです。

  1. 画像分解能を考える。
  2. 必要な画素数を撮像範囲から考える。
  3. 画素数からカメラを選定する。

1.画像分解能を考える

画像分解能とは画像上における1画素のサイズのこと。
前項で「画像上における1画素が0.05mm」と書いた部分にあたります。
今回のテーマは「最小欠陥サイズから考える」ため、まずは現在行われている検査基準から最小欠陥サイズを確認しましょう。

後は簡単です。
欠陥は最低でも2画素で撮像されるべきなので、
必要な画像分解能 = 最小欠陥サイズ / 2

画像分解能の考え方

最小欠陥がφ0.1㎜なら、必要な画像分解能は0.05㎜/画素となります。

また、画像分解能の一般的な考え方は下記の通り。

画像分解能の考え方

ここでは「画像分解能」と書きましたが、メーカーによって呼び方が違うようです。
撮像分解能、画素分解能とも呼ばれますが、全て同じ意味合いで使われています。

2画素×2画素の根拠は後述します。

2.必要なカメラ画素数を撮像範囲から考える

必要な画像分解能とワークの大きさが分かれば、必要なカメラの画素数が導き出せます。

例えば、一般的なペットボトルのキャップで考えてみます。
キャップの大きさは約φ30㎜。
この際、撮像範囲は少し余裕を持ちましょう。
おおよその目安ですが、撮像範囲の6〜7割の範囲で検査対象が映ることが理想です。

撮像範囲の決め方

なぜなら撮像する際、ワークがいつも同じ位置に来るとは限らないから。
もし、ワークが撮像範囲からはみ出すと未検査部分が生じ、検査機として成立しません。

ワークの位置は搬送時にずれる

このキャップの例の場合、42㎜程度の撮像範囲とすることにしましょう。

計算すると、
42㎜(撮像範囲)/ 0.05㎜(画像分解能) = 840画素が必要と考えられます。

必要な画素数の計算方法

3.カメラを選定する

ステップ2では一辺が840画素以上必要と導き出せました。
次はどのようなカメラ(画素数)があるか見てみましょう。

画素数横×縦
30万画素640×480
48万画素800×600
120万画素1280×1024
200万画素1600×1200
400万画素2048×2048
500万画素2448×2048
1200万画素4096×3000

この条件で考えると、120万画素のカメラ(1280×1024)が最適と考えます。
(計算した840画素より多い画素数のカメラを選ぶ。)
キャップなどワークの横縦比が近い場合は、縦方向の画素列に着目する必要があります。
ワーク対象自体が長い場合は、横方向の画素列を基準としてもOKです。

ワークが長い場合の撮像方向

これでカメラの選定は完了です。

よく頂く質問「このシステムではどれくらい小さな欠陥が検出できますか?」

導入検討中のみなさんは、ぜひメーカーからのご提案書・報告書に注目してみてください。
カメラの画素数や撮像範囲が分かれば、今回の計算方法を使い、概ね検査能力が見えてくるはずです。

検証レポートを見ると検査能力が概ねわかる。

1.画像分解能 = 撮像範囲 / 画素数
2.検出能力 = 画像分解能 × 2画素 ですね。

なぜ2画素×2画素で計算する?

例えば、検出対象と画像分解能が同じ大きさのケース。
たまたま画像素子と欠陥の位置がピッタリ合えば、画像上でコントラストを維持できます。ただ、もちろんそんな都合のいいことはありません。
たいていの場合、画素と欠陥の位置がずれます。その場合、画素の明るさは低減します。

欠陥サイズと画像分解能が同じ場合、コントラストが得にくい。

続いて、2画素×2画素のケースで考えましょう。

欠陥サイズが2画素×2画素分の場合、コントラストがギリギリ維持できる。

こうすると、2画素×2画素なら認識しやすそうですね。

これが2画素×2画素の根拠です。
ただし、各メーカーやアルゴリズムによっても考え方は変わります。
メーカーによっては3画素×3画素、またはそれ以上を推奨しています。
また、AIを使って検出や分類したい場合、検出対象が2画素×2画素では情報量が少なく、AI学習で不利になる可能性もあります。
2画素×2画素はあくまで最低条件として考えてください。

3画素×3画素としても、計算する考え方は同じです。

  1. 最小欠陥の一辺が3画素で撮像されるための画像分解能を考える
     例)黒点φ0.3㎜
       0.3㎜ / 3=必要な画像分解能は0.1㎜/画素
  2. 撮像範囲と画像分解能から必要な画素数を考える
     例)撮像範囲が100㎜
       100㎜ / 0.1㎜ = 必要な画素数は1000画素
  3. 必要画素数以上のセンサを持つカメラを選ぶ
     例)200万画素(1600×1200)カメラ
       → 縦方向で必要な1000画素を満たせる。

画像処理機のスペックと価格にも注目

また大きなポイントはカメラ自体の価格はもちろん、画像処理機側のコストも変わること。
各メーカーでグレード別のラインナップがあり、対応できるカメラの画素数や処理速度に差があります。

接続するカメラに応じて画像処理機のグレードが変わる。

PCと画像ボードの組合せも基本的には同じ考え方です。
高画素になるほど処理能力を上げるためコストが増える傾向になります。

まとめ:カメラを見直すことはコスト最適化に大きく貢献する

仮に高画素ではなく低画素カメラでも検出可能となれば、

✓ カメラ自体の単価が下がる
✓ 画像処理機のグレードが下がり、コストが下がる
✓ 画素が低ければ、処理速度が上がる→サイクル速度が上がる

カメラと画像処理のコストだけで見ても数十万円単位で差がつきますし、極端な話、カメラを見直した結果システム自体が「2台分→1台でも十分!」となることもあり得ます。

念のためお伝えしますが、低画素カメラにすることを推奨している訳ではありません。
検出能力が達成できなければ、プロジェクトは失敗するでしょう。
カメラ選定方法を理解し、ぜひコストの最適化に繋げてください。

また今回は最も着目すべき最小欠陥サイズからカメラの選定方法を紹介しました。
実は、他にもカメラの選定ポイントは非常に多くあります。

  • インタ―フェース(カメラリンク・GigE・USB・CoaExPressなど)
  • 転送速度(fps)
  • モノクロ・カラー
  • センササイズ
  • ビット数
  • エリア/ラインスキャン

今後もカメラ選定に有益な考え方を発信いたします。

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*本記事のまとめPDFは2月17日頃にアップロード予定です。

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