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初めての画像検査機導入、何から始めたらいい?
省人化によるコストの削減や、見逃し・バラツキなどによる目視検査の課題からAI・画像検査に興味を持っている方は多いと思います。しかし初めてプロジェクトに取り組まれる皆さんはこんなお悩みをお持ちではないでしょうか?
「何から始めたら良いかわからない…」
「ワークはどれだけ集めればいい?」
「他の業務も忙しいため、スムーズにプロジェクトを進めたい。」
本記事では、元画像検査メーカーの技術担当である著者が、AI・画像検査機導入の手順をわかりやすく解説します。 事前準備からメーカーへの問い合わせ・評価のポイント・よくある失敗例まで、AI・画像検査機導入に必要な知識が全て手に入ります。
初めて中小企業で画像検査機を導入する方を始め、生産技術・品質管理/保証・製造に所属されている方はぜひ最後までご覧ください。
YouTubeでも解説しています!合わせてご覧ください。
事前準備:ワークと情報を整理しよう
スムーズなプロジェクトを進行には、事前準備が非常に重要です。メーカーへ問い合わせてから準備をするのではなく、先に用意をしておくことで初回面談から具体的な提案が受けられるようになりますし、余裕を作ることで複数のメーカーを比較しながら検討することも大切になります。
準備リストを大公開!
私がメーカー技術担当者だった頃、この情報が欲しかった!という内容も含めて紹介します。また準備する項目だけではなく、メーカーがその情報が欲しい理由もまとめておきました。背景も理解頂くことで、準備のスピードと情報の精度も上げて頂けると思います。
さっそく準備リストを見てみましょう。
- ワークのサイズ
- 材質
- ワーク表面の状態
- 検査項目
- 品種数
- 検査員の人数、シフト
- 生産数
- 環境
- 目視検査の要領
- 導入の目的
- 予算
- スケジュール
ワークのサイズ
例:縦・横・高さ・直径など
ワークのサイズを知ることで、撮像範囲やカメラ位置などを机上計算で算出でき、光学条件の選定に役立ちます。また、ワークのサイズが分かると搬送条件をイメージすることにもつながります。
外観写真と図面を用意できればメーカーは非常に分かりやすいです。(不要な情報は削除して問題ありません。)
検証段階ではポンチ絵で手書きでもいいですが、設備製作時には図面が必要です。
材質
例:アルミ・SUS・鉄・樹脂…など。
搬送条件の参考にします。(傷がつきやすいか?重量のイメージなど)
ワーク表面の状態
例:
・メッキムラがある
・洗浄工程後の為、きれいな状態
・防錆油が付着している
光を照射した際の反射をイメージする為に必要です。写真があるとより分かりやすいですね。特に防錆油などの液体が付着しているかどうかで、検査難易度も大きく変わってきます。
検査項目
例:
黒点:Φ0.3mm~
傷:長さ1mm以上 など
主にカメラの画素数や台数選定に必要です。特に最小欠陥サイズが画素数の基準になるため重要となります。
NG基準がない場合は、現在NGとして除外しているものの欠陥サイズを顕微鏡などで計測しておくと良いです。
品種数
形状違い・色違いなどで何品種が対象としたいのかをまとめましょう。あまり大きさや形状が違いすぎる場合は、検査システムとして兼用が難しい場合があります。
どんな品種でも検査できる装置を求めすぎると、運用やコストの面で実現性がなくプロジェクトが頓挫することになるので注意しましょう。
検査員の人数、シフト
特に省人化効果を狙う場合など、投資対効果の算出に必要です。
生産数
検査装置の処理能力の計算に必要です。シフト数の情報と合わせて考慮されます。
例えば、検査工程は1シフトのみの稼働であっても、工場全体は2シフトであればメーカーは検査も2シフトにすることをユーザーに打診する場合があります。なぜなら、検査機が2シフトで稼働できれば処理能力は1シフト時の半分となるため、コストを抑えやすくなるからです。
環境
コンタミや粉塵の付着により誤判定が発生するか確認します。または周囲の機器から振動が出ていないかも重要です。撮像時に振動があると画像にブレが生じ、検査に影響がでる場合があるからです。
目視検査の要領
目視検査の要領が画像検査においても参考になります。(どの様な光の当たり方、視点で観察しているか。)
卓上型の検査装置を検討している場合は、メーカー側は取り出し・収納も含めた一連の動作を見ることで効率的な検査方法や運用を提案しやすくなります。
導入の目的
例:
・省人化による検査コスト削減
・うっかりミスによる重大NG流出を防止など
例えば、重大NGの流出防止であれば、全自動ではなく半自動でも対応可能などと提案の幅を広げやすくなります。
予算
提案時の目安にします。メーカーは予算が分からないと提案しにくく、お互いに時間のロスになります。目安程度は伝えることを推奨します。
価格イメージが分からない場合は下記を参考にしてください。
- 生産・加工機へ組み込み:50万~300万円
- 搬送ラインへ取り付け:400万~1000万円
- 半自動機・卓上機:200~1000万円
- 専用検査機:1000万円~
*上記は過去経験値よる数値で、実際は仕様により価格は変動します。
スケジュール
いつまでに導入すべきなのか?
新プロダクトで、生産開始スケジュールが決まっていれば伝えておくと、プロジェクト進行速度も考慮してくれる。(時間がなく、進捗やプロセスを短縮しすぎないように注意!)
ワークの用意:NGは段階的に用意することをお勧め
メーカーにてテストするためにはワークが必要です。ワークは欠陥や部位によって集めておく必要があります。
NGワーク
NGは欠陥の程度に応じて、4グループで集めておくと良いでしょう。
- 限度OK
- 限度NG
- 通常のNG
- 大きめのNG
![](https://pixelup.jp/wp-content/uploads/2025/01/6adbd744e55aaa31e124c13bbb865926-e1737923673934.png)
検査装置としては、傷や汚れでも限度OKを検出できる仕様で選定されます。限度NGが検出できる仕様に合わせてしまうと、感度調整の余裕度がなくなってしまうからです。そのため、限度OKが検出できるレベルから調整段階で検査感度を緩くし、OKとNGが分別できるレベルに調整します。
また、OKとNGがどこまで区別できるかの確認のためにも、限度OK/NGの両方を用意することをお勧めしています。
全ての欠陥が検出可能とも限らないため、どのレベルまでなら検出できるかを確認するために、通常レベル・大きめも含めたNGを用意しましょう。
急にNGが集めることも難しいため、日頃からNGワークは収集しておくことがおすすめです。
また、欠陥位置がどこにあるかを図示しておくとメーカーは分かりやすいです。
私も経験がありますが、渡されたサンプルの中でどこに欠陥があるのかわからず、検証に余計に時間がかかることがあります。最悪、検出した場所が見当はずれでメーカー・ユーザー共に時間を浪費するケースも少なくありません。
ワークをナンバリングの上、リストを作り写真で欠陥位置を示すのが最も良い方法です。
![](https://pixelup.jp/wp-content/uploads/2025/01/246ce71f692efaf36de1c1acfe80cb32-e1737923692413.png)
ワークにペンで直接マークする場合もありますが、AIで学習する際にマークの影響を受ける場合もあるため出来れば避けましょう。
OKワーク
OKワークは最低でも5個以上あった方がいいでしょう。OK品でもロットによってバラつきが生じることがあります。バラつきがあっても安定した検出が可能かどうかを判断する必要があります。そのため可能な限りロットが違うものを混ぜて用意しておくことが理想です。
AI外観検査の場合、良品・不良品でそれぞれ数十~100枚前後の画像を使い学習するケースが多いようです。(良品画像のみを使った学習方法もあります。)特にNG画像はそれほど多くワークが用意できないことも想定されます。その場合は取得済みのNG画像から、新たなNG画像を生成するサービスも検討してよいと思います。
また、メーカーにもよりますが検証には費用がかかる場合があります。
そもそも画像検査をする必要はあるのか?
画像検査は万能ではなく、全ての検査項目を検出しようとした結果、コストやタクトが間に合わずに断念するケースが後を断ちません。検討前に、画像検査にする必要があるのか?他の工程で対応することはできないかを検討し、最後に残ったもののみを画像検査の対象とすることをお勧めいたします。
- 目視でも対応できるレベルではないか?
- 検査に時間が掛かっている部位を優先してみる?
- お得意先と欠陥基準を交渉し、緩和できないか?
- 製造工程で保証または改善できないか?
また、検討を進める段階で、「この欠陥も検査できないの?」「どうせ導入するなら、いろんな検査が出来た方がいい!」と社内の上長や関係部門からも指摘が入り検討した結果、コストが増えすぎる・検討時間がかかりすぎる状況となり、プロジェクトが頓挫することに…。決して珍しい話ではありません。
画像処理・AIメーカーに問合せする
ワークの準備が出来たら、いよいよ画像処理・AIメーカーへ問合せしましょう。
一言で画像処理・AIメーカーと言っても、その商品やサービス提供の方法は各社により異なります。
以下に代表的なパターンを掲載します。
メーカーの形態
1.PCパッケージソフト
・汎用PCにインストールして使うタイプ。
・お試しや小規模な設備向け。
2.画像センサ
・レンズ・カメラ・画像処理部分が一体になって、手のひらにのるサイズ感のものが多い。
・計測や有り無し、文字読取りまたは難易度が低めな外観検査(分かりやすい打痕・汚れなど)。
3.汎用画像処理
・比較的なんでも出来る。
・難易度が高めな外観検査。
・専用検査装置を作る場合は、汎用画像処理を用いて構成する場合が多い。
・AIを使える・使えないかが分かれるので確認。
4.AIソフトメーカー
・ソフトのみや筐体含めた提供など、様々な形態がある。
提供範囲を確認しておく。
5.画像検査システム
・画像からシステムまで一貫して対応してくれる。
・全部任せられるため、評価・管理工数も減り責任所在が明確。
6.その他
・産業PCを使い、カスタムするケースもある。
一概に正解はなく、みなさんの予算や考え方にあったメーカーを選べばよいと思いますが、導入時のリスク低減やコストの最適化のため、2~3社は比較することを推奨します。
また、コストや機能で比較することも重要ですが、担当者や企業の経験値も非常に重要です。画像検査は撮像技術やアルゴリズムが重要視されがちですが、その使い方は多岐に渡るため使いこなせるだけの知識を担当者が持っているかどうか、またワーク特有の特性やバラツキに応じて装置側や環境面の対策も必要になるなど、経験値が成功可否を握っていると言っても過言ではありません。
担当者の経験値を見極めるポイントは、「担当者から製品と現場への質問があるか?」です。
「現場では搬送時にこんなバラつきが出ませんか?」
「他のお客様ではロット違いでこんな現象がありましたが、貴社ではどうですか?」
経験値がある担当者はどんどん上記のような質問をしてきます。そのような方が見つかった際は安心できると思います。
評価時のポイント
画像処理・AIメーカーにて事前テスト及びレポートを提出されると思いますが、その際に抑えておくポイントは3つあります。
レポートの確認
各欠陥に対し、〇△で評価がついていたり「検出可能です」のコメントがついているはずですが、それだけではなく「何の指標がどのくらいの値であるか、またOKとNGとの差」を確認して下さい。例えば、「黒点NGレベルの面積値が90画素、OKレベルは30画素」などです。
具体的な値とOK・NGレベルの差を確認することで、主観ではなく客観的な検出能力を判断することが可能です。また同じワークを複数回確認した際、どの程度その値がばらつくかも確認できればベストです。
デモに立ち会う
初回の評価で複数のメーカーを比較した後、1社を選定して2回目の評価に移りましょう。
この時、検証だけではなく「立ち合いデモ」を依頼してください。
目的は画像検査の理解を深めることです。画像検査に過度な期待を持ち過ぎ、「この欠陥が検出できるなら、別の欠陥も検出できるはず」と考えた結果、期待した検出性能に到達しない場合もあります。メーカー担当者には光学条件の意図や検出アルゴリズムについても質問してみましょう。可能であれば、ワークの位置をずらしたり傾きを加えた際に検査にどのような影響が出るか試してください。撮像時の注意点の理解も深まるはずです。
並行して設備構想
検証時と実際の設備とで条件の差異を減らすことが導入時のリスクを減らすことにつながります。特に二回目の立ち合いデモをする際は70~80%は装置構想を固めておきたいところです。
例えば、
・撮像時はチャックしているか開放か?
AI学習への影響や背景の見え方・反射条件に差が出てくる。
・搬送速度を想定したシャッター速度に設定する。
明るさが足りているかの確認する。
などのように装置構想により光学機器や検査能力への影響が生じるため、1回目の検討を経て装置構想は並行して検討することをお勧めいたします。
まとめ
いかがだったでしょうか。
画像検査装置は正しい手順で進めれば、時間とコストのリスクを減らしながら導入することが可能です。ぜひこの記事を参考にしながら、円滑にプロジェクトを進めてください。
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